構造化知識研究ニュース(安全設計研究所)

信大は、規模は小さい。しかし、技術力の高い製造業が地元に集積している点において、他大学に比べ有利だ。2003年2月、信大教授らが出資し、株式会社・信州TLO(本社・長野県上田市、山崎淑夫社長)を設立した。セイコーエプソン(本社・長野県諏訪市)から特許の専門家を社長に迎えた。信大から産業界への技術移転やマーケティングなどを行う会社だ。

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オリオン機械と提携。商品化に成功すればロイヤルティー(特許権使用料)

2004年11月23日

ナレッジ・データベース

2004年11月18日、信大工学部は産業機械製造のオリオン機械(本社・長野県須坂市、太田哲郎社長)と「包括的連携協定」を結んだ。今後は、信大が持つ分析や計測などの研究成果と、オリオン機械の製品化のノウハウを結びつけ、複数のプロジェクトを発足させる方針だ。商品化に成功すれば、信大工学部はロイヤルティー(特許権使用料)などの形で一定の取り分を確保する。

野村彰夫学部長は、締結式後の記者会見で「協定は期待されている流れかと思う。政府は全国で700ある大学の一部をつぶせと言っているが、信大は生き残る自信がある」と意気込みを語った。

財源確保

国立大学法人化に伴い、「荒波の時代を迎えた」(本部事務局幹部)と受け止める信大。研究成果を財源確保につなげ、それを研究に再投資することに成功しないと「先細りは避けられない」(本部事務局幹部)。研究を担う人材を確保するため、戦略的にブランドイメージを上げる必要も出てきた。こうした中、信大は相次いで改革を打ち出している。

大学内に「特任教授」ポスト

2004年から、信州大学内に「特任教授」ポストを新設し、「将来は民間企業から大学と企業をつなぐ人材を招く」(藤沢謙一郎副学長)ことを検討している。長野には優れた製造業が多い。野村学部長は「僕の出身の東北大(宮城県仙台市)より、よっぽど地の利がある」と話す。オリオン機械との協定を呼び水に、他の地元企業とも同様の協定を結ぼうとしている。

国立大学の法人化

全国89の国立大学は2004年4月、国立大学法人となり、文部科学省から離れて独立した組織になった。文科省からの運営費交付金は2005年度以降、毎年1%ずつ削減される。各大学は従来の研究と教育だけでなく、直接的な社会貢献が求められるようになり、産業界や行政との連携が進んでいる。